立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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【開催報告】2020年度特別展「放射線像/Autoradiograph―放射能を可視化する―」関連企画 オンライン講演会「人類と放射線――私たちが気をつけるべきこと」

2020.10.13(火)

 10月10日(土)、2020年度特別展「放射線像/Autoradiograph―放射能を可視化する―」関連企画として、当館名誉館長の安斎育郎先生によるZoomを用いたオンライン講演会を開催し、30名の方にご参加いただきました。
 放射線防護学と平和学を専門とする工学博士である安斎先生は、2011年に「安斎科学・平和事務所」を、そして、2013年に「福島プロジェクト」を立ち上げ、これまでに70回、福島で調査を重ねてきました。2011年4月、最初に福島に向かった際、自身が所持していた線量計の数値が、福島第一原子力発電所に近づくにつれて日常生活圏の放射線レベルの1,000倍にまで上がっていった様子や、福島市内在住の方と安斎先生自身の年間の被曝量を計った比較調査など、数値に基づく調査の様子が紹介されました。京都在住の安斎先生よりも福島在住の方の方が、原発由来の放射線による被曝がある分、外部被曝の数値が高いですが、ヨーロッパで大気のラドン値が高い地域の住民はさらに多くの放射線の中で暮らしています。汚染地域と比較的近い場合でも、実質的に除染をすることができない山中と、市内の住宅では状況が大きく異なることや、物質により半減期が異なることなども紹介され、科学的な根拠を持って、「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に向き合う」ことの重要性を改めて強調されました。
 今回はZoomを利用した開催であったため、チャットの中に「勉強になりました」という感想や、「内部被ばくについてはどうでしょうか?」との質問が寄せられました。講演会の終了後、早速、安斎先生からこの質問への回答をいただいたので、この場で紹介します。

 

質問:内部被ばくについてはどうでしょうか?

安斎先生の回答:2013年に福島プロジェクトを立ち上げて以来、福島県下の水や食品やイノシシの糞などを沢山分析してきました。汚染が認められたのは、汚染した山でとれた山菜類、山を主要な生活圏としているイノシシの糞です。今後もしばらくの間、山菜やイノシシの肉を食べる場合は放射能濃度を確かめることをお勧めします。
 福島県下の水や空気や市場で販売されている食品については問題ありません。コープ福島が100家庭を選んで「陰膳調査」を何年も続けました。陰膳調査とは家族が食べるのと同じ食事を一人前余分につくってもらって放射能分析をする調査ですが、現在放射能汚染は検出されません。福島プロジェクトが支援している福島市のさくら保育園は、給食の食材すべてを毎日放射能検査してきましたが、放射能汚染は全く検出さません。福島県沖で獲れる魚類などの海産生物の汚染も検出されなくなりましたが、気になれば水産庁や福島県の分析結果を参照してください。こうしたデータは、第三者が分析すればウソかホントか分かるので、基本的に信用して頂いて大丈夫です。疑問が出たら、いつでも安斎にご質問ください。
 今日は時間の関係で食品の放射能汚染について触れる時間がありませんでしたが、私たちは毎日の食事に含まれるカリウム40による内部被曝や、大気中の放射性ラドンガスの吸引による内部被曝を受けています。原発由来の放射能汚染による内部被曝などゴメンこうむりたいものですが、私たち福島プロジェクトも、福島を訪れてそこの空気を吸い、水を飲み、福島県産の食品を食べることによる内部被曝はまったく気にしていません。福島の生産者たちが、産品の放射能をチェックして市場に出しているにもかかわらず、「福島の食品は汚染しているはずだ」「ほかの地域の産品があるのに、わざわざ福島の産品を買う必要はない」といった気分によって忌避される傾向があること憂慮しています。

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