立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

お知らせ NEWS

第19回メディア資料研究会を開催いたしました 開催報告

2021.03.01(月)

 2020年度最後となるメディア資料研究会は、「林尹夫日記について」と題し、当館の学芸員・田鍬美紀による報告をオンラインと対面のハイブリッド形式で実施しました。

 当館は「林尹夫関係資料群」と呼ばれる戦没学徒に関する資料を収蔵しています。林尹夫(1922-1945)は、神奈川で生まれ、第三高等学校を卒業後、1942年に京都帝国大学に進学しました。1943年に召集されて海軍航空隊で訓練を受け、19457月、四国沖での偵察飛行中にアメリカ軍戦闘機の攻撃を受けて亡くなりました。

 三高時代から少尉任官までを記録した彼の日記は、一部削除・改稿されて1967年に『わがいのち月明に燃ゆ』(筑摩書房)として出版され、戦没学徒研究に役立てられています。当館所蔵の同資料群には、同書の原本となった「遺稿ノート」4冊をはじめ、書簡や原稿、写真などが含まれており、1997年に寄贈されました。20207月には、日記の完全版となる『戦没学徒 林尹夫日記 完全版 ―わがいのち月明に燃ゆ―』(三人社)が出版されました。

 報告では、資料の来歴や日記出版の背景、林尹夫の再評価などが説明され、資料群の全容や意義が明らかにされました。また、丹念な資料調査によって明らかになった当時の人間関係や、あらたな林尹夫像の提示もなされました。参加者からは、他の戦没学徒資料との比較、「林尹夫日記」研究の意義や今後の研究の方向性、一五年戦争期の若者の国家観や思想についての歴史学的考察、日記中の性愛表現をめぐる文学やジェンダーの視点からのアプローチなど、研究のさらなる深化を期待する意見が出されました。

 調査の成果は、完全版の出版として結実しただけでなく、当館のミニ企画展示にも反映され、公開されています。

 

19回メディア資料研究会

林尹夫日記について」

日 時:2021年2月19日(金)17:00-19:00

報告者:田鍬美紀(国際平和ミュージアム 学芸員)

参加者:16

 

▲田鍬美紀氏
 

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