立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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平和博物館における戦争体験継承プロジェクト研究会を開催しました(3月3日) 開催報告

2023.03.14(火)

2023.3.03(金)

 

 

2023年33日、「戦争体験が無い世代が伝える戦争の記憶2-自由学園の勤労動員学徒川田文子さんをめぐって」と題して、自由学園最高学部1年の山澤遥乃氏、山澤綾乃氏、自由学園資料室主任研究員の村上民氏に報告をいただきました。

川田文子さんは、学徒勤労動員中に空襲で亡くなった自由学園の生徒で、国際平和ミュージアムに遺品が収蔵されています。この度、後輩にあたる両名が「探求」(高校3年生)の中で、川田さんが日々の生活を記録した生活帳や同級生による手記をもとに、川田さんとその戦争体験に迫る実践を行い、成果が『川田文子さんのこと』として出版されました。

報告では最初に、山澤遥乃氏、綾乃氏に『川田文子さんのこと』の紹介と取り組みの経緯や「探求」を通して工夫したことや考えたことをお話しいただきました。

川田さんの姪との出会いを契機に、遥乃氏は『戦争は女の顔をしていない』の影響も受けながら同級生の手記をベースにスマホのアプリでマンガを描きました。人物の描き分けや効果的な表現の模索はその場にいた人々の行為と心情を理解しようとし、読者に伝えようとする試みです。生活帳を写した綾乃氏は、川田さんの日々の営みを一文字ずつ丁寧に追いかけました。今回両名は発表に先立ち生活帳などを閲覧しましたが、その感想として、亡くなった日の先まで記入欄が準備され、川田さんがその先の生も思い描いていたこと、埋まることなくその日々が奪われたことに改めて衝撃を受けたこともお話になりました。そして、この探求を通して考えたいこととして、マンガを描いた日に新たな戦争が始まった(ロシアによるウクライナ侵攻の日であった)という現実、「戦争の悲惨さ」よりも戦争で何が起こったかを知り、それを忘れないことの重要性、戦争はなぜあってはいけないのか、平和のために何ができるのかという問いを持つことについて話されました。

続いて村上氏から、自由学園の理念、戦時下の学園の歴史や勤労動員、アーカイブズ事業の取り組み、そして、この探求の新しさについてお話を頂きました。自由学園では、戦時下の学園の歩みを問い直す活動として1980年代以降多様な証言の収集、さらに2000年代に入ると学生による卒業生へのインタビューや、アーカイブズの再検討(資料室の開室)が行われました。今回の取り組みはこうした実績の上に成立したものであることがうかがえます。村上氏は、両名の取り組みの新しさとして、指を使ってスマホで描く、手で書き写すという体を使った行為であることに着目しています。そして、記録が伝えていることを理解したいと探り求め、自ら継承の方法を見出していると評価されました。

その後、田中聡メディア資料セクター長より、構図やテンポなどマンガ作品としての優れた表現、筆写作業が当時の同世代の生活や感情の追体験となっていることを評価するコメントと、両名の作業がどうクロスしたか質問がありました。

両名は、遥乃氏が先にマンガを描きはじめたため、綾乃氏は生活帳の筆写に取り組み、さらに、マンガは情報量に限界があるため、情報を補うポスターや文章を制作するなどし、それぞれの成果を補完しあいながら取り組んでいたことを話されました。

 『川田文子さんのこと』については自由学園ホームページ「関連書籍」でご紹介しています。

 

 


第15回平和博物館における戦争体験継承プロジェクト/第27回メディア資料研究会

「戦争体験が無い世代が伝える戦争の記憶2-自由学園の勤労動員学徒川田文子さんをめぐって」

 

日時:202333日(金)17301930

場所:オンライン

発表者: 山澤遥乃氏

    山澤綾乃氏

    村上民氏

参加人数:50

 

▲山澤遥乃氏(左)・山澤綾乃氏(右) ▲村上民氏

 

 

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