立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

紙芝居「トビウオのぼうやはびょうきです」 MUSEUM ARTIFACTS






紙芝居「トビウオのぼうやはびょうきです」

1985(昭和60)8 

作 いぬいとみこ、画 津田櫓冬

1954(昭和29)3月、ビキニ環礁でアメリカの水爆実験によって発生した放射線降下物を浴びた海の生物を題材とした紙芝居作品。原作の絵本は1982(昭和57)年に発表され、同年にアニメ映画化もされている。

 


 静かな海にすむトビウオの親子がいました。しかし彼らは水爆実験の影響によって、父親は死に、ぼうやは不治の病にかかってしまいます。海の生き物たちは寝たきりになったぼうやが何の病気か分かりません。トビウオのぼうやを誰が助けてあげられるのか、と読者へと問いかけます。
 ビキニ事件とは1954(昭和29)年にマーシャル諸島ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験により、第五福竜丸を始めとした漁船数百隻が「死の灰」を浴び、数万人の人々が被ばくしました。そしてその影響は人だけではなく、ビキニ環礁周辺の海やそこに住む生き物にまで及びました。当時アメリカとソ連は冷戦下にあり、軍備拡張競争が繰り広げられていました。両国が相手国への不信感、自国の安心のために武器の装備更新と威力の向上を目指しており、水爆実験はその軍拡競争の流れの1つに位置付けられます。
 戦争や武器の進化によって、多くの人々、そして自然も傷つけられてきました。トビウオのぼうやは犠牲者のひとりです。人が起こしてしまったことに影響を受けるのはヒトだけではありません。私達が様々な生き物と共に生きていることをトビウオのぼうやはそっと教えてくれています。そして私達がこれからも彼らとともに生きていくためには何ができるのでしょうか。


実習生 M

 

ある朝、空が赤く染まり、色が青に戻ると白い雪のような粉が降ってくる。
面白がったぼうやは海面を楽しそうに飛び回る。

 

海には毎日のように死んだマグロたちが潮に乗って流れてくるようになる。

 

原因不明の病で寝たきりとなるぼうや。涙を流す母親へ、ぼうやは
「ぼくね、よくなったら、おとうちゃんを さがしにいってあげるよ。」と言う。

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