立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

出征兵士を送る歌 MUSEUM ARTIFACTS






出征兵士を送る歌

1939(昭和9)年113

大日本雄弁会講談社(現:講談社)が陸軍省の提携のもと、懸賞により歌詞と曲を募集して作った曲。歌唱はいずれもキングレコード所属の歌手だが、A面とB面にそれぞれ異なるバージョンが収録されている。発売後は全国を巡って宣伝が行われ、30万枚を売り上げた。

 


 

 中国での戦線が拡大するなか、大日本雄弁会講談社と陸軍省が歌詞と曲を懸賞により一般から公募して作った曲で、日本放送協会の「国民歌謡」54集にも収録されています。当時は政府・新聞社・放送局・レコード会社などによりこうしたキャンペーンが度々行われており、内閣情報局公募の「愛国行進曲」(1937年)、東京日日新聞・大阪毎日新聞・海軍省公募の「太平洋行進曲」(1939年)といった曲が作られました。日本が戦時体制に移っていくなか、兵士だけでなく文化までも動員されたのがこの時期でした。
 1等に選ばれた作曲者の林伊(い)佐(さ)緒(お)(1912-1995)は当時キングレコード所属の歌手で、戦後にも歌手・作曲家として活躍した人物です。歌手としてはNHK紅白歌合戦に11回出場し、日本歌手協会会長も務めています。作曲家としては、「リンゴ村から」「長崎の女(ひと)」などを作曲しています。
 召集令状によって召され、出征していく兵士の数は戦火の拡大とともに増えていき、終戦まで数多くの兵士が「いざ往け つわもの 日本男児!」と歌われて送り出されていきました。表面上は勇壮に見えつつも悲壮感も漂う、この歌詞と曲調を聞きながら、戦場に送られていく兵士の心境は果たして「華と咲く身の感激」だったのでしょうか。


実習生 石井和志

 

出征兵士を送る歌

作詞:生田大三郎 作曲:林伊佐緒 編曲:篠原正雄 伴奏:キング管弦楽団
歌(A面):永田絃二郎・長門美保
歌(B面):樋口静雄・林伊佐緒・兒玉好雄・三門順子・井口小夜子・横山郁子

 

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