立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

総魂帰神 MUSEUM ARTIFACTS






総魂帰神

1941(昭和16)~1945(昭和20)年頃か

一五年戦争中、国民精神総動員運動が行われ国民を戦争に協力させるための動きがあった。この文章は、神に祈り精神を修養することが戦争に勝利するために必要であり、神国日本の国民として神に従い、監督されるべきだということを説いたものである。

 


 

 この文章の制作者は、修養団の主幹である蓮沼門三です。当時国内には1937(昭和21)年の日中戦争を契機に国民精神総動員が広がっていました。「生活を簡素に」「一本の釘を粗末にするな」といったポスターもその一環です。修養団は一五年戦争時にこの国民精神総動員運動を民間側から支援し、国家主義者から多大な期待をかけられていました。
 そもそも修養団とは1906(明治39)年に蓮沼門三を中心とした学生たちによって創設された社会教育団体で、社会の風紀改善、青少年の健全な精神教育を運動の柱に掲げていました。創始者の蓮沼は入学した東京府師範学校(現在の東京学芸大)の宿舎の汚さを見かね単身美化活動を始めました。冷たい水や雑巾絞りのために手をぼろぼろにしても活動を続ける姿に周囲が心を動かされ、次々と同士が現れました。これが修養団の始まりです。蓮沼は「愛と汗の精神」という理念を掲げ、これは活動の基本理念として現在まで引き継がれています。
 文章の前半部分は神国日本の国民として熱心に神に祈り、その意思に従うことを説いており、国家と神の結びつきを強く示しています。現在の私たちが読むと少々受け入れがたい部分もありますが、凄愴な戦争によって亡くなる人々や、遺された人々の悲しみを憂いている一文も見受けられます。蓮沼の人となりがうかがえる興味深い資料だと思い今回選出しました。


実習生 小笠原有寿

 

参考資料:精動絵はがき(時局ポスター展作品より)
国民に質素倹約や金属回収を徹底させるための絵葉書。
どちらも一五年戦争時に広がった国民精神総動員運動の一環である。
こういったスローガンを国民の間で流布させることで、国民の意識を戦争に向けさせていた。

 

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