立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター Peace Education and Research Institute, Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

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平和博物館における戦争体験継承プロジェクト研究会を開催しました(7月17日) 開催報告

2022.11.04(金)

 2022年717日、「平和博物館の前史を再確認する:平和のための京都の戦争展を中心に」と題して、日本の平和博物館論の第一人者である福島在行氏にお話をいただきました。

 日本の平和博物館は、戦争体験の継承と平和の理念の紹介を主要な課題としていますが、その理念と方法はどのように紡がれてきたのでしょか。本報告では、1980年代に全国で盛んになった戦争展運動を日本の平和博物館の前史として位置づけたうえで、「平和のための京都の戦争展」の特徴と、その後の平和博物館に引き継がれた特性と課題について論じられました。

 1981年に始まった「平和のための京都の戦争展」は毎年20004000の展示物を出品し、第1回から14回(81年から94年)までに通算160万人が見学する大規模な取り組みでした。その目的はアジア・太平洋戦争の全体像(日本の被害だけでなく世界に与えた損害と苦痛)を語り継ぎ、責任を主体的に考え直し、平和の尊さを訴えることにありました。福島氏は京都の戦争展の特筆点として、戦争の全体像と京都という地域性、戦争責任の自覚、現代世界の課題との接続、資料の持つ「迫真力」へのこだわりをあげ、京都の戦争展から資料を受け継いだ国際平和ミュージアムの開設は、これを引き継ぐものであったことを示しました。

 国際平和ミュージアムの常設展示にも平和のための京都の戦争展の中で培われた特徴は受け継がれてきましたが、展示の難しさもまた引き継いでいます。特に大きな課題として、福島氏は、モノ資料が具体的場面を映す訴求力を持つ一方で政治過程や全体構造を後景に退かせること点、知識や価値観を学ぶ空間としての機能の補填の必要性があげられました。最後に、戦後80年近く経つ現在の平和博物館は、日本戦後史における一五年戦争の重要性は変わらないものの(日本国憲法に代表される民主主義や、「平和と民主主義」を教学理念とする立命館大学)、構成員が多様化する中でどのように新たな語り方を模索するかという課題もあることを指摘されました。

 

 

平和博物館における戦争体験継承プロジェクト研究会

「平和博物館の前史を再確認する:平和のための京都の戦争展を中心に」

日時:2022717日(日)13001500

場所:オンライン

発表者:福島在行(平和のための博物館市民ネットワーク)

参加人数:13

 

 

▲福島在行氏
 

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