立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

大東亜戦争割引国庫債券 MUSEUM ARTIFACTS






大東亜戦争割引国庫債券

1943(昭和18)222

東条英機内閣の大蔵省により発行。表裏に10円という本券の額が表記され、日本銀行の本店と支店、郵便局で換金できることが書かれている。内閣印刷局が印刷し、菊紋や日章旗があしらわれている。戦艦や戦闘機、戦車など戦争の影響も見られる。

 


 

 割引国債とは表記されている額面の金額を下回る価格で発行され、満期時に額面金額で返還される国債のことです。途中での利払いはありません。例えばこの債券の場合、7円で発行され、表裏に表記されている10円を満期時に受け取ることができます。引き替えは日本銀行の本店と各支店、郵便局で換金できる旨が書かれています。菊紋や日章旗や数字などの精緻(せいち)な絵柄で鮮やかにあしらわれている一方で、戦艦や戦闘機、戦車が描かれるなど太平洋戦争の影響が色濃く見られます。

 1936(昭和11)年に成立した広田弘毅内閣以後は無制限に国債が発行されるようになり、償還(しょうかん)はほとんどされませんでした。そして金融統制によって国債の強制的な消化政策がとられました。戦費調達のための国債は9802600万円発行され、1941(昭和16)年度以降は国債残高が国民所得を超過しました。1945(昭和20)年度には1480億円となり、日本財政は完全に破綻してしまいます。
 太平洋戦争の真只中に発行された本資料からは戦争の影を色濃く見ることができます。戦後75年の今年だからこそ確認したい資料です。


実習生 多鹿怜央

 

用語解説  

国  債 国家が歳入の不足を補うことなどのために負う金銭債務。また、それを示す債券。 「国債」、日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典』第二版、小学館、2000-2002 より
東条内閣 陸軍大将東条英機を首班とし、昭和16年(1941)10月18日から19年7月22日まで存続した、太平洋戦争を遂行した内閣。 藤原彰、「東条内閣」、国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』、吉川弘文館、1979-1997より
内閣印刷局 紙幣・銀行券・郵便切手・公債などの有価証券および官報その他政府刊行物の製造を業務とする国の現業官庁。(中略)大正13年(1924)12月、内閣の一部局となり、内閣印刷局と改称。昭和18年(1943)11月、戦時体制強化のための行政機構整備によって、再び大蔵省の所管となった。 大森とく子、「印刷局」、国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』、吉川弘文館、1979-1997より
東京裁判 第二次世界大戦後、連合国が、戦争中の日本の政治・軍事指導者の戦争責任を訴追するために開いた裁判。 秦郁彦、「極東国際軍事裁判」、国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』、吉川弘文館、1979-1997より
消滅時効 時効の一つ。一定の期間、権利を行使しない場合に、その権利を消滅させる制度。時効期間は、債権以外の財産権は20年、債権は10年が原則であるが、商行為によるものは五年、その他短期の時効期間が定められているものがある。 「消滅時効」、日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典』第二版、小学館、2000-2002 より
財  政  法 日本国憲法において財政法が会計法から独立したのであって、この財政法(昭和22年(1947)3月31日公布)は、国の予算その他財政の基本を定めた法律である。この財政法で定められている基本条項の多くが、第二次世界大戦前の明治憲法では、会計法―行政府による財務行政の秩序を定める法律―によって規定されていた。 佐藤進、「財政法」、国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』、吉川弘文館、1979-1997より

 

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