立命館大学国際平和ミュージアム Kyoto Museum for World Peace, Ritsumeikan University

紙芝居「敵くだる日まで」 MUSEUM ARTIFACTS






紙芝居「敵くだる日まで」

1943(昭和18)年85 

日本教育紙芝居協会によって発行された、銃後を題材とした紙芝居。内容は老舗の羊羹屋が戦争のために自らの店をたたみ、鉄工場へと転職をする話である。当時の国家総動員の政策下における国民の思想教育の様子がうかがえる。

 


 

 総力戦となった第二次世界大戦下において、国家は国民全員を戦争に動員するために、ポスターやチラシ、紙芝居などの視覚的なメディアも大いに活用しました。国策紙芝居とは一五年戦争期に、当時の日本政府が国民に戦争の「正しさ」を訴え、戦争へと動員するために作られた印刷紙芝居のことです。視覚的に分かりやすいという特徴から紙芝居は日本全国に「全国民向けの教材」として広められることとなりました。一作品当たりの発行部数は、数百から一万部にもなり、当時の政府や新聞社が国策紙芝居の教化、啓発作用を重視していたことがうかがえます。しかし敗戦後、戦犯になることを恐れた紙芝居編集者によって焼却され、国策紙芝居は多くが消失してしまいました。
 内容は銃後物語、体位向上、勤倹貯蓄、生活改善、防空知識、傷痍軍人慰問、スパイ防止など多岐にわたっていましたが、いずれも「戦争の実態を描かない」という点が共通しています。この紙芝居でも「戦争に勝つまで」というキーワードの元、自らの生活を犠牲にし、「正しい」戦争に全てを捧げる国民の様子が描かれています。戦争は国民の支持・協力がなければ成立しないものです。なぜ当時の国民は戦争に反対できなかったのでしょうか。平和が当たり前の時代に生きる我々は、わずかに残るこの国策紙芝居がもつメッセージを読み取り、戦争に対して一人一人自分の考えを持つことが求められるのではないでしょうか。


実習生 五十嵐星南

 

 

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